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【放置する歯は裏切る】メンテナンスに通う人だけが知っている「最安の自己投資」
目次
「痛くないから大丈夫」が、一番こわい
歯科医院で働いていて、正直に思うことがあります。
久しぶりに来院された方のお口の中を見ると、ご本人が思っているよりずっと進んでしまっていることが多い。ご本人は「特に痛みもないし、大丈夫だろう」と思って来られる。でも、虫歯も歯周病も、痛みが出る頃にはかなり手遅れに近い段階まで来ています。
普段から診療をしていて感じるのは、痛いときだけ病院に来るという方は、やはり残っている歯の本数が少ないということです。しかも、残っている歯もグラグラに揺れていたり、虫歯がかなり深くまで進んでいて「これはもう抜かないと難しいですね」とお伝えしなければならないケースも珍しくありません。ご本人にとっては「ちょっと痛いかな」程度のつもりで来られたのに、実際にはそこまで進行していた。こういう場面に、何度も立ち会ってきました。
どのくらいの方がリスクを抱えているか。
令和4年の厚生労働省の調査データを見ると、歯周ポケットが4mm以上ある方の割合は全体の 47.9% でした(出典:厚生労働省 令和4年歯科疾患実態調査)。ほぼ2人に1人です。しかもこの方々の多くは、自分が歯周病の入り口にいることに気づいていません。
痛みがないから、問題ない。この思い込みが、歯を失う最大の原因のひとつだと日々感じています。
メンテナンスに来ない人と来る人の「口の中の差」
これは統計ではなく、毎日の診療で目の当たりにしている事実です。
定期的にメンテナンスに来られている方のお口は、年齢を重ねてもきれいな状態を保てています。一方、数年ぶりに来られた方の口腔内は、歯石がびっしりついていたり、気づかないうちに虫歯が何本も進行していたり。ご本人が一番驚かれます。
なぜこんなに差がつくのか。
歯垢は毎日の歯磨きだけでは取りきれません。磨き残しは少しずつ歯石になり、歯石は歯ブラシでは落とせません。この「少しずつ」の蓄積が、数年後に大きな差になって表れます。メンテナンスでは、この自分では対処できない部分をプロが定期的にリセットしているわけです。
そしてもうひとつ、定期的に通っていただくことには別の大きなメリットがあります。私たち医院側が、患者さんのお口の中の状態を継続的に把握できるということです。
前回と比べてどこが変わったか、どの歯にリスクがあるか。こうした「経過」を知っているかどうかで、対応の精度はまったく変わります。たとえば急に歯が痛くなって来院されたとき、メンテナンスで定期的に診ている方であれば、過去の記録や経過から原因の見当がつきやすく、スムーズに対処に入れます。逆に、初めて来られた方や何年も間が空いた方だと、まずレントゲンを撮って、全体の状況を把握するところからのスタートになる。痛みがあるときにそのぶん時間がかかるのは、患者さんにとっても辛いことです。
定期メンテナンスは、歯をきれいにするだけの時間ではありません。「何かあったときに、すぐ的確に動ける関係」をつくる時間でもあるのです。
フッ素は「お守り」ではなく「道具」
虫歯予防でよく名前が挙がるフッ素。フッ素入りの歯磨き粉を使っているから安心、と思っている方も多いかもしれません。
確かに、フッ素の予防効果には確かなエビデンスがあります。日本口腔衛生学会によると、フッ素配合歯磨き剤で虫歯発生率は 20〜30%減少 し、歯科医院でのフッ素塗布を定期的に受けた子どもは虫歯が 約40%少ない というデータが出ています(出典:日本口腔衛生学会)。
フッ素がやっていることを簡単に言うと、3つです。
- 酸で溶けかけた歯の表面を修復する(再石灰化)
- 歯の表面を酸に溶けにくくする(エナメル質の強化)
- 虫歯菌が酸を作る力を弱める(細菌活動の抑制)
ただ、ここが大事なのですが、フッ素は「使えば安心」という類のものではありません。歯磨きのやり方、食生活、お口の中の菌のバランス。いろんな要因が絡み合って虫歯は起きます。フッ素の力を最大限引き出すには、定期的にプロに口の中の状態を見てもらい、その人に合った使い方を教わることが欠かせません。
お守りのように「持っていれば大丈夫」ではなく、正しく使ってこそ意味がある。それがフッ素です。
お金の話をしましょう
メンテナンスに通わない理由として多いのが、「お金がかかる」という声です。
では、実際にいくらかかるのか。
月に換算すると、500〜1,000円。コンビニのコーヒー数杯分です。
これに対して、メンテナンスをせず虫歯や歯周病が進行した場合のコストはどうか。
「予防にお金をかけるのはもったいない」と思う方にぜひ知っていただきたいデータがあります。
トヨタ関連部品健康保険組合が組合員52,600人を対象に行った調査で、歯科検診を定期的に受けている人とそうでない人の 歯科以外も含めた 総医療費を追跡しています。結果、65歳の時点で年間約15万円の差が開いていました(出典:トヨタ関連部品健康保険組合調査)。
歯科の費用だけでなく、全身の医療費が下がっている。歯の健康と全身の健康がつながっていることを、5万人超のデータが裏づけています。
年間1万円のメンテナンスで、将来の医療費が年間15万円違う。この数字をどう見るかは、皆さん次第です。
「分かっているけど行けない」の正体
ここまで読んで、「メンテナンスが大事なのは分かった。でも腰が重い」と感じた方もいると思います。
実はこれ、意志が弱いとか、ズボラだとか、そういう話ではありません。人間の脳のクセの問題です。
人は「今の面倒くさい」を、「将来の大きな損」より重く感じてしまう。 これは意志の問題ではなく、脳のクセです。歯医者の予約を取るのが面倒、仕事が忙しい、今日じゃなくてもいい。こうして先延ばしを繰り返すうちに、気づけば1年、2年が経っている。
さらに厄介なのが、人は「得すること」より「損すること」のほうをずっと強く感じるということです。メンテナンスに行くと「時間を取られる」「お金を払う」という目の前の出費が気になる。「歯が守られる」という利益は何年も先の話なので、どうしても後回しにしてしまう。
じゃあどうすればいいか。
塩谷歯科医院で実践しているのは、メンテナンスの帰りに次回の予約を取ってもらうことです。
これだけで、驚くほど継続率が変わります。「いつか行こう」は絶対に実現しません。カレンダーに日付が入った瞬間に、それは「予定」になる。やる気や意志の強さに頼らず、仕組みで解決する。これが最も確実な方法です。
最初の一回さえ来ていただければ、あとは流れに乗るだけ。だから「まず一回」が大切なのです。
80歳で自分の歯が何本残るか
最後にひとつだけ。
「8020運動」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。80歳で20本以上の歯を残そうという目標です。令和4年の調査では、達成者が 51.6% まで増えました(出典:厚生労働省, 2022年)。
逆に言えば、まだ約半数の方は80歳の時点で20本を下回っています。
20本を下回ると何が起きるか。硬いものが噛めなくなる。入れ歯の不快感。食事が「楽しみ」から「作業」に変わる。好きなものを遠慮する生活。
定期メンテナンスを続けている方は、この20本ラインを超えられる可能性がずっと高い。これは統計が示す事実です。
塩谷歯科医院より
長々と書きましたが、お伝えしたいことはひとつだけです。
何年もメンテナンスに来ていない方ほど、来てほしい。
怒られるんじゃないか、ひどい状態を見られるのが恥ずかしい。そう思って足が遠のいている方が少なくないことも分かっています。でも、私たちはそのために毎日ここにいます。どんな状態でも、「今日から始める」ことに遅すぎることはありません。
塩谷歯科医院では、お一人おひとりの状態に合わせたメンテナンスの間隔や内容をご提案しています。

